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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)1052号 判決 1972年7月29日

理由

一  本件供託金利息の請求に関する訴えの適否について

昭和四七年五月一一日東京法務局供託官・坂田暁彦が、原告よりなされた本件供託金利息の払渡請求を却下する旨の決定をしたことは、当事者間に争いがない(成立に争いのない甲第一号証によれば、右却下処分は、右供託金利息債権の時効消滅を理由としてなされたものである。)。

ところで、国家機関たる供託官は、供託者から供託金利息の払渡請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を与えられているものと解すべきである。したがつて、供託官が供託金利息の払渡請求を理由がないと認めて却下した行為は、行政処分であり、供託者は、右却下行為が権限のある機関によつて取り消されるまでは、右供託金利息の払渡しを受けることができないものといわなければならず、供託関係が民法上の寄託関係であるからといつて、供託官の右却下行為が民法上の履行拒絶にすぎないものということは到底できないのである(最高裁判所昭和四五年七月一五日大法廷判決・最高裁民集二四巻七号七七一頁参照)。そして、供託官の処分に不服があるものは、監督法務局長又は地方法務局長に対して審査請求をするか(供託法第一条の三)、当該供託官を被告として右処分の取消しを求める行政訴訟を提起する(行政事件訴訟法第三条第二項・第八条第一項)ことができるのであるから、直接、国に対し供託金利息の支払を求める民事訴訟を提起するのは(右供託官の処分前においてはもとより)許されないところと解するのが相当である(大阪高等裁判所昭和四五年九月三〇日判決、判例時報六一九号四三頁参照)。

よつて、原告の本件供託金利息の請求(右利息に対する遅延損害金請求の当否はさておき、これをも含めて)に関する訴えは、不適法として却下すべきである。

二  本件弁護士費用に関する請求について

前叙のごとく本件供託金利息の請求に関する訴えが却下を免れない以上、本件弁護士費用に関する請求は、その余の判断をするまでもなく、失当として棄却されるべきである。

(裁判官 佐藤邦夫)

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